Text & Photo: Atsuko Tanaka
MORI in Cafe Habana TOKYO
―今日のファッションのポイントを教えてください。
トラッドスタイル。アディダスのハラコのスニーカーは多分90年代のやつで、アニマル柄は今の俺の中での流行りで。いつもトラッドとかUKファッションにロックやヒップホップのスタイルを取り入れてる感じですね。サングラスは「CRAP EYEWEAR(クラップ・アイウェア)」っていう南カリフォルニアのブランドのです。
―森さんのそのヘアスタイルも、結構トレードマークな感じですよね?
昔からずっとフェードです。クラシックスタイルが好きで。フェードでBボーイっていうわかりやすい感じが好き。
―最近好きなブランドやファッションスタイルは?
ブランドは「WALES BONNER(ウェールズ・ボナー)」。昔ファッションの仕事をしてた地元の先輩に教えてもらったんですけど、ロンドンの女性デザイナーのブランドで、ジャージのセットアップとか、ジャマイカンレゲエのファッションを取り入れてて、クールな感じがいいなと思って。俺、差し色として、赤とか黄色とか緑とか一色入れるのが好きで。スタイルはピチッとしてる感じが最近好きですね。
―普段洋服はどこで買うことが多いですか?
ネット。店舗で見て、悩んでネットで買う。メルカリとヤフオクとかが多いです。あとはフリマやリサイクルショップとかも行きます。昔からそういう所で安く買うのに結構エクスタシーを感じる。「こいつ、誰にも見つかってないな」って。古着が多いすね。
―ファッションスタイルを参考にしている人やサイト、アプリなど
Asap NastとTyler(タイラー・ザ・クリエイター)。ファッションに古着を入れてる人が好きなんで。インスタはランダムと言うよりは人で見ることが多いですね。「この人今何着てるんだろう」とかって。
―世界で一番オシャレな人が多いと思う街は?
ロンドン。行ったことはまだなくて、今年行きたいと思ってます。晴れっぽい色も好きだけど、ロンドンの曇りっぽいアースカラーみたいな、STONE ISLAND とか、ちょっとアンダーグラウンドの匂いがする、あんまり着飾らないおしゃれがあっていいなと思う。
―ファッション・ビューティーで欠かせないアイテムは?
サングラスと、常に髪型をキープすること。髪が伸びてくると結構マインドも変わるから。フェードは3、4日に一回やります。地元と、東京に来た時は中目黒の「THE PARLOUR」で。
―今後挑戦してみたいスタイルはありますか?
ダブルのスーツとか。セットアップでカチッとネクタイして、それでラップするのもかっこいいなって思う。モッズファッションも好きなんでいいですね。基本、俺上品だから(笑)。ヒップホップしすぎてないけどキャラが Bボーイっていうところを目指してます。
―今日撮影したCafe Habanaはよく来るんですか?
そうですね、この上に事務所があるんで、よくここで飯食ってます。毎回カジキマグロのハーフトルタとコーラを頼む。それで食べて眠たくなったら上に行って、ソファーでくつろいでます(笑)。
―東京には頻繁に来ている?
月に半分ぐらい。地元の群馬で曲作って、東京はライブとか仕事がある時に来て、あと彼女がこっちにいるんで一緒に過ごしたり。俺の彼女、めっちゃ可愛いんですよ。モデルなんですけど、東京で知り合いのとこで飲んでたら来て。Love at first sight(一目惚れ)でした(笑)。
―ラブラブでいいですね!では、音楽についてお聞きしたいです。森さんのアーティスト性に独創性を感じるのは、東京から離れて群馬に拠点を置いていることが一つの理由かと思いましたが、その辺はどう感じてますか?
そうだと思います。曲を作る時は全部解放して何も考えず、自分の耳が気持ちいいと感じる言葉を使って作ります。何も意識してないから、そうやって聞こえるのかもしれないですね。東京の人によく言われるんですよね、東京にいないから多分それができるって。
―東京にいる時はマインド変わります?
俺はマジ興味ないことは全部シャットアウトする性格だから、いいとこだけ取り入れる。東京でムッチャ仲良いみたいな人はいなくて。結局地元のメンツが一番動きやすいし、そいつらと東京にかましに来るスタイルかな。
―東京の人たちについてはどう思いますか?
結構見極め大事だと思います。めっちゃいろんな人いるから、俺は自分が好きなとこで遊ぶっていうのを大事にしてて。性格的にシャットアウトする時もあるし、流される時もあるんで。嫌な大人もいるし、わかりやすいミーハーな感じっていうか、売れてるものは好きで、そうじゃないものに対しての冷たさとかもあったりして。まあでも、どうぞどうぞって感じで(笑)、俺は俺なんで。
―逆に桐生は?どんな人たちが多いですか?
ホームの人たちはみんな応援してくれるし、俺も帰れるホームがあるから東京でふざけられるっていうか。いつも一緒にいる先輩は昔東京でスタイリストをやってて色々見てきてるから、俺が東京に1週間とかいて、帰った時に「あ〜疲れた」ってなるとめっちゃわかってくれる。あと「GOOD LIFE CAFE」っていうDJバーがあって、DJの先輩たちは俺と20くらい離れてるんですけど、昔のカルチャーとかも教えてくれたりするし、過ごしやすい。温かい所です。
―桐生にヒップホップシーンはあるんですか?
昔「LEVEL-5」っていう BUDDHA BRAND とかヒップホップのアーティストが来てたハコがあったんですけど、コロナでなくなっちゃって。でもDJ の人やラッパーもいるし、みんなカルチャーに興味ある人が多い。
―森さん、どんぐりずさんの音楽を聴いてると、スタジオに籠って曲作りされてる時間が長いんだろうなって感じるんですが、実際どうですか?
お〜、嬉しい。そこ、めっちゃ大事にしてるんで。俺もベルリンとかUKのミュージシャンとかの曲を聴くと、「こいつスタジオで籠って作ってんな」って感じる。でも俺は結構外で遊ぶのも大好きです。相棒はいつも籠って、多分今日もビート作ってる。
―独創性の源は?
ジャンルにとらわれない聴き方をします。自分が小さい時から、ググっとくるのは何かと何かの組み合わせとか、パッと聞いて面白い言葉とか、意味よりも音としての気持ち良さですね。例えばスパニッシュの言語とか、ロンドン訛りの英語とかパリの言葉とか、なんかわかんないけど聞いてて気持ちいい。そういうのを日本語でやったら面白いんじゃないかっていう。
―でも森さんのようなスタイルって、実際やろうと思ってもなかなかできないと思うし、やっぱりセンスが要りますよね。
キャッチーさも大事にしてますね、皆が言いたくなるような言葉を使ったり。でも尖りすぎないように、けど音は尖ってるっていう。エジプトの音とかすげー面白い。ただ喋ってるだけなのに、ダンスミュージックに乗ってると面白く聞こえる。そういうのをチョモと話し合って作ってく。日本のヒップホップってみんな英語を使うし、俺も最初は英語かっこいいと思って発音も練習したりしたけど、それをクリアすると、もう1回日本語の面白さに気づくっていうか。例えば俺らがエジプトの言葉を聞いて面白いと感じるのと一緒で、日本語を使った方が世界に行けるのかなってようやく気づいた。
―最近面白いと思った言葉はありました?
Miso ExtraとAiliっていうアーティストが好きで最近よく聴いてるんですけど、その人たちは片言の日本語を使って歌ってるんです。例えば「眉毛剃って髪サラサラヒゲパーマ」とか。そういう外国人が面白いと思う日本語って全部響きが良くて参考になる。Ailiの曲で「Pari Pari」っていうのが特に面白いかな。そういう「パリパリ」とか、「ワクワク」とか、響きが楽しい言葉。
―ちなみに森さんは英語は堪能なんですか?
文は書けないすけど、放り込まれたら喋れるみたいな感じ。俺の母ちゃんがフィリピン人で、日本語と英語とタガログ語とポルトガル語が喋れる。なんで俺も日常会話くらいは。SkaaiとPOP YOURSで一緒になった時とか、ふざけて英語だけで喋るっていうのをやったりしました。あいつはめっちゃネイティブですけど。
―では、先日リリースされたソロ初の曲「YAZAWA」(大沢伸一作曲)についてお聞きしたいです。あれはどういう経緯でやることになったんですか?
Red Bullの「64Bars」からオファーが来て、他の人がやってないことをやりたいと思ったし、ダンスミュージックにハマってるから大沢さんに頼んだんです。「アシッドの音を入れて下さい」って発注したらとんでもないのが来た(笑)。音とぶつからないように、何回も言葉を選んで結構考えました。できた時にはかなりのエクスタシーで、「俺ヤベェ!」ってなって。
―歌詞はどのくらいで作ったんですか?
1回チョモのパソコンにデータを落として、ラップを入れて聞いてみて、気持ち良く聞こえないところがあったらそこのラインを変えるっていう作業をやって、3日ぐらいかかった。今回は長い方ですね。いつもは大体1日でできる。
―早いですね。
曲作りにおいて俺が大切にしてるのは、自分が楽しい時に作ること。なんか一個でも心配事があったりしたらダメだし、自分を常にハイの状態に置いとかないと絶対にいいものができない。今はレーベルやめたんですけど、入ってた時は制作に追われるから、どうしてもやっぱ焦りが音に出ちゃってた。そういうのって聞いたら結構分かる。
―じゃあ自分の気持ちが不安定な時は曲は作らない?
ですね。一回遊ぶ。リフレッシュする時間を作って、何も考えないように。
―楽しいとガッと書けちゃうんですね。
「NO WAY」は、クソ酔っ払って「楽しかったー」って家に帰ってきたら、チョモからビートが送られてきてて、ヤバってなって1時間ぐらいでリリック書いて。次の日チョモの家に行ってRecしたら、「ヤベー、森が覚醒したぜ!」ってブチ上がってた(笑)。やっぱりそういう「やったー!」っていう感情がないと、ライブやってても気持ち良くない。
―話は「YAZAWA」に戻りますが、大沢さんとやるのは久しぶりだったんですか?大沢さん、すごいノリでしたね。
あの踊りは偶然から生まれたんです。大沢さんも意外と気取るのが嫌いというか、嘘が嫌いな人だから、プロデューサーに「卓をいじってる感じの絵をください」って言われたら、「今実際にやってないし、 だったらもっと面白いもの作りましょうよ」ってなって、あれが生まれた。みんなと違うことをしたいマインドなんですよね、そこは俺と似てると思う。面白かったな。
―あれはみんな衝撃的でしたでしょうね。他に印象的なエピソードはありますか?
二人でUKファッションで行こうって話しをして、俺はGloverallのダッフルで、大沢さんはAquascutumのトレンチで行きましょうって。ヒップホップじゃないことをしようってなってヤバいのが生まれた。
―周りからの反響はどうでしたか?
結構反応いいっていうか、シンプルに「ヤバっ!」ていうのが一番多かった。俺はふざけるのも大好きだけど、やっちゃう時はやっちゃう。他のラッパーたちを突き放す感じで行こうと。UKドリルとか好きだけど、ただやるだけでは面白くないからアシッド入れちゃいましょうって。
―今後はソロの活動も増えていく感じですか?
結構考えてます。EPをまず 出したいですね。どんぐりずはキャッチーで明るくハッピーな感じでこれからもかまして、ソロではもっとディープに行こうと。UK ジャングルとか、知り合いから今ビート集めをしてるすね。ビートは全員日本人で行こうと思ってて、 フィーチャリングで海外の好きなアーティストとできたらいいなと思ってます。
―楽しみにしてます。最後に、森さんにとってヒップホップとは?
ヒップホップじゃないってことですかね。 BボーイがBボーイのファッションしててもつまらないし、パンクの精神を俺は大事にしてて。ヒップホップでかっこいい人達って、何に対してもあーだこーだ言わないじゃないですか、好きにしなって感じで。どんなスタイルもその人がヒップホップって言えばヒップホップだし、周りの目を気にしないでやりたいことをやる。みんなに分かりやすいヒップホップもあるし、それはそれで、俺が同じところを辿ってもつまらない。そういう視点を持つことがヒップホップかなと思ってます。
Special Thanks: Cafe Habana TOKYO
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