Text & Photo: Atsuko Tanaka
MUD in Ikejiri
―今日のファッションのポイントは?
カーハート(Carhartt)のロンTと、スニーカーはいつものエアフォース1で、帽子は千葉の柏の方でお世話になってる先輩のブランド、スーパートランプ(SUPTERTRAMP)のものです。基本シンプルな感じが多いですね。昔スケートやってた頃、無地Tにリーバイスの太いジーパン履いてみたいなシンプルな格好が多かったんで、そこから来てるかも。サイズは気分に合わせて落としたりするけど、大体太めが多いです。
―パッと見サーファーっぽくも見えますよね。
親父がサーフィンやってるんで、自分も10代の頃は親父と一緒に、毎週千葉の民宿を借りてサーフィン修行みたいなのしてました。最近はスノボーにハマって、冬は行きまくってます。スケボーはあんまりやってないけど、もうすぐ茅ヶ崎に引っ越すんで、あっちはスケートパークが多いし、また再開しようかなと思ってます。
―最近好きなブランドやファッションスタイルは?
ブランドは、お世話になってるブラックアイパッチ(BlackEyePatch)、カーハートとか、あとはナイキ、リーボックとかのスポーツブランドですね。アディダスも、前はあまり着なかったけど最近は着てます。あとは無地Tブランドのプロクラブ(PRO CLUB)。スタイルは、一時期よりは昔の太めのスタイルに戻ってきてるかな。昔からダボダボだったんで、体の作りがダボダボに合ってるんだと思います(笑)。
―ちなみにそのネックレスは?
KANDYTOWN(キャンディタウン)のメンバーのDONY JOINT(ドニー・ジョイント)が「GOOD ¥ELLA(グッドイェラ)」ってブランドをやってて、そこで作ってもらったやつです。自分の生まれ年の平成4年で、一番高い硬貨の500円玉で。
―洋服は普段どこで買うことが多いですか?
GROWAROUND(グロウアラウンド)。アメリカの最近のラッパーやヒップホップ好きな人たちが着てるブランドとか、最先端なものが揃ってる店です。KANDYTOWNのメンバーがそこで働いてた時があって、よく行ってました。最近も渋谷でライブがある時は、ライブ前に行って買ったりしてます。
―ファッションスタイルを参考にしている人はいますか?
90’sヒップホップのラッパーですね。2Pac、Progidy(プロジディ)、 Wu-Tang(ウータン)とか。最近1周回って、古いのが新しいみたいな感がありますよね。
―世界で一番オシャレな人が多いと思う街は?
自分はレゲエも結構好きなんですけど、ジャマイカの人たちはオシャレしてるイメージがあります。聞いた話だと、ゲトーの人たちでもパーティーに行く時はお金ないなりに服を決め込むって。ダンスパーティーの映像とか見ても、みんな白いパンツ履いて靴はピカピカだし、ああいうのオシャレだなって思います。
―今後挑戦してみたいスタイルは?
イタリアンマフィアみたいな、白いシャツにベージュのスラックスで、ハット被ったりとか、いつかやってみたいなと思います。でも、どこで服買えばいいか全然わからない(笑)。
―今回撮影した店「Sha Re」について、 MUDさんにとってどんな場所なのか教えてください。
2ヶ月前にできたばかりの新しい店なんですけど、オーナーのトムとタツキは昔からの知り合いなんです。トムはKANDYTOWNのメンバーと同級生でサッカーも一緒にやってたり、タツキも俺らの活動をずっと応援してくれてて。
―MUDさんは、ここにもう何度か来てる?おすすめはなんでしょう?
オープン初日に一回来て、この前もライブ前に寄りました。おすすめは、カルパッチョとか刺身系。自分は、最近肉より魚の方が好きで、ここは魚のメニューが結構あるんでいい感じですね。あと、青椒肉絲とか回鍋肉とか中華系の炒め物も美味しいらしいです。
―トムさんやタツキさんとの思い出は何かありますか?
昔、渋谷にVERTEX(バーテックス)っていうバーがあって、若い頃は毎日仕事帰りにそこで飲んでたんですけど、トムはその頃からの飲み仲間で。そこが閉まって、UeCONA (ウエコナ)っていう店にバーテックスのスタッフの人たちが移って、そこでトムが働き出して、タツキはIKEBO(池坊)という所で働いてて、その二人が合体してSha Reができた感じです。ここはオープンして間もないからあまり思い出はないけど、昔はとにかくバーテックスで飲んでましたね。朝までテキーラとか。
―テキーラなんですね。
着いてまずビール飲んでると、「テキーラ行く?」って言われるんで、「じゃあ行きます」みたいな感じで、今日も始まったってなって(笑)。3杯以上頼むならボトル頼んだ方が安いからボトル頼んで、ボトルに名前書いておくんですけど、知り合いがめっちゃ来るんで次来た時はもうないっす。みんなMUDのだからいっかって。でも、業界系の人が結構来る場所だったんで、一緒に曲やってみたいとか会ってみたいラッパーの人とか偶然会ったりして、そこから仕事に繋がることとかもありました。あとは外国人のお客さんが多くて、俺がDJブースでパソコンでYouTubeを2画面開いてボリューム調整してDJして、繋ぎが良かったりするとみんなブチ上がったりすることもありました。
―DJもするんですか?
やらないですけど、仲間のDJと一緒にレコードを掘りに行ったりしてます。レゲエ好きなんで7インチのとか集めてて。10代の頃は、オリジナルのビートを買うコネクションがなかったから、レコードのインストとかでライブしてて、オリジナルが欲しいなって自分で作り始めたりして、それのサンプリング用に100円レコードとか買ってましたね。お金なかったんで。
―じゃあレコードは結構持ってらっしゃるんですね。
そうですね。ニケ(Dusty Husky)さんに夏前くらいに股旅のツアーに同行させてもらった時に、改めてレコード面白さに気づいて、そこからまた仲間と一緒に掘ってます。
―好きなレコード屋はありますか?
岡山にある「JAMAICAN TASTE(ジャマイカンテースト)」っていうレゲエのレコード屋さん。7インチがブァーっと置いてあって、新譜もあったりして、店の真ん中に置いてあるタンテで視聴するんですけど、お店の人全員が何聞くんだろうっていう雰囲気で、怖いけど楽しいみたいな(笑)。
―では、3月にアルバムに出したアルバム「Make U Dirty 2」の話を。改めて、アルバムを出して周りからはどんな反響を得ましたか?
めちゃ良かったよとか言われることはないけど、地方に行くと毎回ハコがパンパンで、ライブ盛り上がってくれてます。今回は四国とか初めて行った所もあったんで、どのくらい人が入るか不安でしたけど、結果パンパンになって。この間、名古屋でライブした時も、他のメンツもいたけどフルパンでみんな盛り上がってくれて、感謝ですね。
―アルバムに入っている「Far East」という曲は、日本のB-Boyの若者が何を考えているかを伝えるために全部英語で書いたとのことですが、海外の方に伝わった感はありますか?
どうですかね、「レコードはないのか?」とかDMは来ましたけど。元々自分がヒップホップを聴き始めたのは小学生の時で、ずっとUSのを聴いてて、その頃は日本語でラップをするという考えがなくてまず英語勉強しなきゃって思ってたんですけど、高校でKANDYTOWNのメンバーと知り合って、みんな日本語でラップしてて、俺も日本人だから日本語でやらないとって本格的に始めました。その間も英語でリリックは書いてたけど、比喩を英語で表現する能力がなかったりして、あまりかっこいいと思える曲ができなくて。でもこの曲は、これだったらいけるかもってトライしました。英語の曲を作ったことで、日本語にも集中できるメリハリがつけられたんで、これからも英語のラップは挑戦していきたいなと思ってます。
―また、今後はレゲエアーティスト(Burning Sugar)としても活動していく予定とお聞きしましたが、そちらはどんな展開を考えていますか?
2021年にMUD名義でレゲエのEP「Burning Sugar」を出したんですけど、今後はレゲエでは、エミネムとSlim Shady みたいな、ヒップホップとは人格を変えてBurning Sugarとしてやっていきます。ルーツレゲエが好きなんで、バンドでもやってみたいし、ギター弾くからアコースティックとかもやってみたい。ラップもそうですけど、メロディを考える時はギター鳴らして作る方がやりやすいです。最近は歌うのが楽しくなってるのもあって。
―曲を作る上で大事にしていることは?
その時その時で感じたことや、社会に対して思うこと、例えば戦争とか、ドラッグだったり、あとは自分の悩みとかを歌詞に落とし込むことを大切にしてます。
―では、最近笑えた出来事は何かありますか?
ツアーに行く飛行機で音楽聴こうと思って、ポケットにカセットテープをパンパンに入れていったんですけど、よし聴くぞってなった時に、イヤフォンを忘れてきたことに気づいて。友達に爆笑されました。
―逆に泣いた出来事は?
犬の映画「僕のワンダフル・ライフ」を見て泣きました。命とか動物、家族愛とかに弱くて、すぐ泣いちゃいます(笑)。あ、でも一番泣いたのはKANDYTOWNのラストライブを武道館でやった時。泣くつもりなかったんですけど、最後の曲でボロ泣きしました。泣いてたのは俺とBSCだけ。みんなに泣いてんじゃねぇよって言われました(笑)。俺は男泣き素敵だと思いますけど。
―今のヒップホップに関して感じることはありますか?
日本だと、良くも悪くもヒップホップが浸透してきた感じはありますね。スケボーもそうですけど、ヒップホップも社会に受け入れられてきて、利用しようとしてる人というか、表面だけしか触れてない人も多いのかなって思いますね。悪ぶってみたりとか。
―逆にこの人はかっこいいって思う人は?
ニケさんのクルー、DINARY DELTA FORCEは一貫性があっていいですよね。90’sとか2000年のヒップホップが一周して今また来てる感じがあるし、昔のものを新しくするとか、そういうことが上手い人たちだと思う。70年代の曲とかをサンプリングして新しい曲を作ることで循環させてるっていうか。
―最近よく使う言葉はありますか?
「ヤーマン(YAHMAN)」、レゲエバイブっす。ここ数年高まってて、「Wassup(What's upの略)」とかよりヤーマンって言っちゃいます。今、若い子達の間でレゲエが流行ってきて、ZendaMan(ゼンダマン)や Youth of Roots(ユース・オブ・ルーツ)、 Asound(アサウンド)とか、20代前半のかっこいいアーティストが増えてます。レゲエアーティストはまずジャマイカに修行に行くのがすごいと思う。自分はニューヨークに行ったことがなくて、それって演歌歌手が日本に来たことないような感覚だなって、まずいなって思ってて。
―アーティストとして今後成し遂げたいこと、直近の目標を教えてください。
引っ越してスタジオを家に作ろうと思っているんで、レコーディングは家でできるようにしたいです。必然的にエンジニアにならないといけないし、プロデュースもこれから挑戦していきたい。自分の曲に関しては、ラップは英語の曲と日本語の曲をメリハリつけてやっていって、レゲエはバンドとしてやっていきたいですね。
―では最後に、MUDさんにとってヒップホップ とは?
ライフスタイルっすかね。自分の悩みとか生きてて感じたことを曲にするのが大事だと思ってるんで。ファッションもそうだし、自分が食べるもの、飲むものとかも音楽に感化されて変わって、生き方そのものがヒップホップと照らし合わさってできてる感じがあります。
取材協力:Sha Re
電話: 03-6453-4421