Text & Photo: Atsuko Tanaka
Skaai in Daikanyama
―今日のスタイリングのポイントを教えてください。
まずは、このベストとバケハです。どっちもこの前韓国に行った時に買ったもので、ベストは見た瞬間に一目惚れでした。メープルシロップをパンにつけたような柄がめっちゃ可愛いと思って、ブランド名は知らずに買ったんですけど、「LORES(ロアス)」のです。バケハはいくつか持っていて、これはグニャグニャってなってるところが好きです。韓国で結構有名なストリートブランドの「thisisneverthat(ディスイズネバーザット)」のもので、持ってなかったから買ってみようと思って。あとは「KENFORD(ケンフォード)」のローファー。ワンマンの時にもここの別の靴を履きました。革靴だからしっかり見えるけど、カジュアルに履きやすいのですごい好きです。
―Skaaiさんと言えばビーニーのイメージがあるので、今日もてっきりビーニーで来るかと思ってました。
自分はパッとしない印象なんで、みんなに覚えてもらいやすいように“ビーニーと眼鏡”っていうスタイルにしようと思って、ラップスタアに出た頃からビーニーをかぶり出しました。その流れで最初のEPのタイトルも「BEANIE」にして、 “ビーニー=Skaai”みたいなイメージにできたらと思っていたんですけど、この前ツアーも終わったので心機一転というか、ビーニーだけに固執せず、最近はバゲハとか別のキャップとかもかぶるようにしてます。型にはまらずに自由に好きなものを着ようかなって。
―今は東京を拠点に活動されているんですか?これまで世界のいろんな街に住んできましたが、東京に対しての印象は?
2月末に東京に引っ越して、もうすぐ1年経ちます。東京は仕事するにもってこいの場所だと思います。環境が揃ってるし、熱気があって、本気の人しか集まってない感じがいいですね。でも、僕はインドアであまり外に出ないんで街のことはまだよくわからないですけど。
―じゃあ、あまり外に出かけることはない?
ですね。基本的に家で YouTube や映画を見たり、本を読んだり、曲を作ったりするのが好きです。ライブとかは誘われたら行ったり、本当に見たいライブに行くくらいですね。
―普段洋服はどこで買うことが多いですか?好きなブランドはあります?
古着屋とか、表参道にある「 H(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS)」がほとんどですね。ブランドで言うと「Schott(ショット)」が好きです。元々は全然革とか着るタイプじゃないですけど、最近すごくかっこいいと思って。地方に行った時もSchottが置いてある店があると行っちゃうみたいな感じです。
―ファッションスタイルを参考にしている人やサイト、アプリなどはありますか?
そんなにないですね。もともとファッションに全く興味なかったし、自分の頭に記憶したものを掘り起こす感じで。でも、Tyler(Tyler, The Creator / タイラー・ザ・クリエイター)は好きです。ローファーが好きなのは彼のおかげな気がします。
―Tylerは音楽から入って、人として好きになって、彼のファッションも好きになった感じですか?
Tylerの場合は特殊かもしれないです。音楽がもちろん最初の入り口ですけど、同じぐらいのタイミングで彼の人格とかファッションとか全部がガーって入ってきた感じがあって。彼にしかない雰囲気やオーラがあるし、全体として一つのブランドになってると思います。
―では、世界で一番オシャレな人が多いと思う街は?
日本じゃないですか?平均レベルが高いですよね、街中歩いてても適当な服着てる人は少ないし。だから、ちょっと過度にオシャレな気もします。特に東京、福岡とかはみんなすごいオシャレで、福岡は結構厳しいですね。でもダサい人に厳しい文化は良くないと思うんですよ。オシャレな人もダサい人も一緒に、同じモチベーションで話せるのがベストだと思うけど、日本は「あのブランドを着てる」とかって人を判断するところがあるから、そういうのは大嫌いです。
―確かに、アメリカとかの方がそういうことだったり年齢とかも関係なくフランクに話せるのはありますよね。韓国は上下関係とか、日本と似てる部分がありそうな気がしますけど。
韓国もちょっと生きづらいですけど日本ほどではないです。日本は住みやすいけど生きづらくて、逆にアメリカとかヨーロッパとかは住みづらさはすごいあるけど生きやすいし、居心地がいい。何を取るかって感じですね。
―ファッション・ビューティーで欠かせないアイテムはありますか?
ビューティーはパックですね。きっかけは、MV を撮る時にニキビとかあると嫌だなと思ってやり始めたんです。もともと肌がすごい弱くて、化粧水とか保湿クリームを塗らなかったら本当にひどくて。最近寒くなってきたし、今は毎日してます。
―今後挑戦してみたいスタイルはありますか?
スーツでかっちり決める系のスタイリングをしてみたいですね。今はストリートでごまかしてますけど、ちゃんと自分に合うスタイルを見つけてみたいと思ってて。夏のスタイルが結構苦手で、いつもシャツとロングパンツになっちゃってたんで、来年は夏のファッションをちゃんと考えたいなと思います。
―では、先月「BEANIE」のツアーで福岡、大阪、東京と3カ所回りましたが、いかがでしたか?
初めてのワンマンツアーで、チケットは結構早い段階でソールドアウトになったんですけど、本当に自分のファンが何百人もいるのかっていう不安とドキドキがありました。でも、ビートメイカーのuinと二人でずっと曲を作ってきて、6曲入りの EP を引っさげてワンマンできたのは、僕ら2人にとってとても大きな意味がありましたし、レーベル「Mary Joy」の肥後さんはじめチームの皆さんと一丸となってツアーを成功させることができて、大きなスタートラインに立たせてもらえたという思いがあります。
―それぞれの都市で、お客さんの反応に違いはありました?
地元の福岡はすごいアツかったですし、大阪でライブをするのは初めてだったんですけど、お客さんの熱度がすごい高かった。東京はお客さんの数に圧倒されて、めちゃ緊張しました。
―緊張するんですか?いつも堂々とされているように見えて、全くそんなふうに感じないですが。
どのライブでも毎回すごい緊張して、マジ震えてます(笑)。でもワンマンをやったから、もうそんなにしないかな。
―ラップを始めてまだ2年少しとは思えない高いスキルをお持ちですよね。
そう言ってもらえることも増えてきましたけど、昔からいろんな言語に触れていたので、アクセントのポイントとかブレスの位置とか、上手いというより独特っていうほうが正しい気がします。
―そのセンスはどこから来てると思いますか?
2通りの評価の仕方があるかなと思って、音的なところは先ほど言った通り、複合的な言語の音感でやってる気がするので独特になったのかなと思います。あとはリリックの内容で言うと、あんまりヒップホップの文脈で語られなかった単語とか、自分が言うことで説得力の生まれるような言葉選びをしてるんで、そういったところで両者がうまい具合にマッチしてるのかなと。ヒップホップ育ちじゃない僕がヒップホップの音楽をやってるのは、ある意味原理主義的には間違ってるかもしれないけど、それでも自分はストリートが好きだっていうのがあるから、その心の葛藤の中で生まれる単語が結構あるんです。そこら辺が特徴なのかもしれないですね。
―Skaaiさんの、ラッパーとしての1番の武器はなんでしょう?
自分の人生そのものじゃないですかね。というのは、人生で起きた出来事とか、体験してきた物語がそのまま音楽というアートになると思うんです。僕のこれまでの人生が特別なものだったから特別な音楽が作れるんだと思うんで、そういう意味で自分の人生で体験してきたことが一番の強みなのかなと。
―特に海外のいろんな国で過ごしてきたことが?
そうですね、それがでかいと思います。アメリカで生まれて、2歳までマレーシアにいて、その後定住地はずっと日本ですけど、小学校低学年くらいから毎年韓国、マレーシア、シンガポール、カナダ、アメリカに留学して。中学の3年間はアメリカに進学して、高校と大学は日本で、最後の年はドイツに1年留学しました。
―改めて、めちゃ国際的ですね!これからはどうする予定ですか?
あんまり考えてないですけど、国境関係なく聴かれるかっこいい音楽を作りたいです。あと、音楽を含めたアートに生きたいと、その覚悟をこの1年間で培いました。例えば映画でもいいですし、自分が伝えたいメッセージや物語を、音楽でなくても別の方法がふさわしければそれを使って表現していきたいと思います。
ー楽しみです。ところで、曲づくりはいつもどんな風にして進めていますか?
大体はビート先行でリリックを書くことが多いですね。これまではuinがいたので、彼と話しながらこういう世界観で、こういう色でとか、そういうのを話し合って。
―今後一緒に曲を作ってみたい人はいます?
作ってみたいというよりは、セッションしてみたい人はいっぱいいます。例えば、これまで自分が好きで聴いていたKendrick(Kendrick Lamar /ケンドリック・ラマー)、Smino(スミノ)、Saba(サバ)、Tylerとか。あとは韓国のヒップホップを聴いてヒップホップにハマったんで、韓国のアーティストとはやってみたいですね。Paloalto(パロアルト)、JUSTHIS(ジャスティス)、Nafla(ナフラ)とか。韓国のヒップホップ はカッコ良くてレベルが高いです。
―これからSkaaiさんが目指すところを教えてください。
特に決めてないですが、とりあえず傑作を作ることですかね。この先自分が何をしたいかを考えた上で作りたいと思ってます。やってることが全部つながっていかないと意味がないと思うし、ダラダラしないようにも、何歳までにこれをするっていうのを決めたい。僕は新人にしては結構年行ってるんで、ちゃんと計画しないと。
―では最後に、Skaaiさんにとってヒップホップとは?
自分らしくさせてくれたきっかけであり、目に見えない家みたいな感じです。僕はどんなジャンルの音楽でもいいと思えばそれでやりたくなっちゃうんですけど、やっぱりヒップホップは帰るべき所っていうか。ライフスタイルで言うとリンクできないところもあるけど、音楽で言うとそうですね。