
bonbero
言葉を武器に、己の道を切り拓く。紡ぎ出す表現、その目覚めと進化
Text & Photo: Atsuko Tanaka
千葉県八千代市出身のBonbero、小・中学生時代はサッカーに打ち込むも、ヒップホップと出会い音楽の道を志す。ラップスキルを磨き、SoundCloudに投稿した楽曲が話題となり、ヒップホップクルー「夜猫族」に加入。その後、「ラップスタア誕生」に出場し、Final進出は逃したものの、その高いスキルでさらなる注目を集めた。昨年は初のアルバム『For A Reason』をリリース。独自のワードセンスと卓越したラップスキルを武器に、次世代を担う実力派ラッパーの一人として頭角を現している。今回のインタビューでは、これまでの半生や転機となった楽曲、自身との向き合い方、アーティストとして大切にしていることついてなどを語ってもらった。
―小さい頃のことを教えてください。どのような環境で、どんな子ども時代を過ごしましたか?
小、中とサッカーをやってたんですけど、外で友達と遊ぶみたいな、普通の感じだったっすね。どんな子どもだったかは、あんまり覚えてないです。小1の時に親が離婚して、それからは母親に育ててもらいました。母親は結構自由に、俺の選択を否定することなく好きにやらせてくれました。
―サッカーを始めたのは何かきっかけがあったんですか?
多分遊びの発生すね。遊びでサッカーやって、俺もやりたいって小学4年生でクラブチームに入って、みたいな感じです。
―結構上手かったんですか?
やっぱり幼稚園とかから始めてるやつの方が強いので、俺はそんなに上手くはなかったです。その頃将来の夢にサッカー選手になるって書いてたりしたけど、今思うと心からそうなりたい気持ちはなかったかなと思います。
―ラップを始めたのは中学生の頃なんですよね。
遊びで始めたのが中3の時です。当時「高校生Rap選手権」が流行ってて、ラップっていう存在を知りました。一番仲良かった親友がANARCHYさんに憧れて同じような格好をしたりして、色々教えてもらううちにハマっていって。それで他中とかからいろんなやつを公園に集めてサイファーしてました。
―ラップはやってみてどうでした?最初からセンスあるなって感じてました?
センスあるとは思ってなかったですけど、実際出たらイケんじゃねえの?みたいな自信はあったっすね。
―そんな感じで、高校に行ってからはラップ漬けの毎日?
そうっすね。高校生になってバイト始めて機材を集めて、マジなやつらと楽曲制作するみたいな、そんなことをずっとやってました。
―その頃からライブにも出たりしてたんですか?
初めてライブに出たのは16歳かな。先輩にライブしたいか?って誘われて、千葉の君津のハコで出ました。その次の年、高2になった時に夜猫族のXakiMichele(ザキミケーレ)から、ライブがあるから見に来ないかって連絡をもらって、東京のライブハウスに行ったら、クルーに入らないかと言われて。それでTade Dustと一緒に入ることになって、その繋がりで東京でもライブをするようになりました。
―高校を辞めたのもその頃?
そうですね、2年生の夏。元々学校がそんなに好きじゃなくてあまり行ってなかったし、このまま行って卒業しても職人コースだなって、ちょうどいいタイミングかもと思って辞めました。
―ラップスタア選手権に2020年と21年に出てますが、経験を通して培ったことや学んだことなどを教えてください。
1回目に出た時は通らなくて、2回目にあと10人ぐらいのところまで残って、その時は行けるっしょみたいなスタンスであまりよく分かってなかったんですけど、今思うと、当時の審査員してたラッパーの方たちのすごさとか、これをこうしたから、あの人たちは今最前線にいるんだみたいなことをすごく感じますね。
―ラッパーとして活動を始めて、大きく変わった転機となる曲や出来事を挙げるとしたら何になりますか?
分岐点だったと感じるタイミングは何個かあります。まず、「Karenai」っていう曲がSNSか何かでプチバズった時。結構ノリで書いた曲だったんで実感なかったっすけど、こうやって数字伸びるんだって思いました。あと最近では、Benjazzyさんとやった「B2B」が出た時も反響がすごくて、その後東京ドームでライブに出させてもらって、ああいう場所でかませるかかませないかで変わるんだなって思ったすね。それで言うとMCバトルもそうで、凱旋とFSLに出た時もそう感じました。
―ファンの方たちは、Bonberoさんのどういうところを評価してると感じてますか?
日本にはそんなにいない早口というか詰めるスタイルのラップをするから、昔からのファンの多くはそういうのが好きなんじゃないかなという印象です。
―リリックはどういうふうに思いつくんですか?
その曲によって込める感情が違くて、自分の思ってることを書くこともあれば、完全に跳ねれればいいっしょみたいなのもあるんで、一概に言えないですけど、その時に思ったことを歌詞にすることの方が多いです。
―去年末初アルバム「For A Reason」を出されましたけど、制作期間はどれぐらいだったんですか?
1年前にできてた曲とかもあったんすけど、詰め込みの作業は半年ぐらいで一気にやった感じです。やってみて、やっぱりアルバム作るのって大変だなと思いました。元々は自分とTade Dustで楽曲をよく作ってたんで、かませばいいみたいにラフに思ってたんですけど、いざ自分のアルバムとなると、1枚に収めるのもそうだし、自分と向き合う時間が難しかったです。
―自分とは結構向き合うんですか?
そうですね、向き合ってるつもりではあるっすね。
―ラップを始めて、この6年でご自身はどういうふうに成長したと思いますか?
これまでの6年で進化したというよりは、この6年で自分が形成された感じがすごくあります。その前の15、6年はただ生きてただけというか、楽しいことを求めてただけだったんで。今は自分との向き合い方とか、人との距離感の取り方とかもそうだし、自分を知れてる感じはすごいあるっすね。
―では、今までの活動を通して一番嬉しかったことは?
「B2B」ができた時も嬉しかったっすけど、それに限らず毎回曲が出来上がった瞬間は楽しくて、最高到達点ぐらいに思います。あと、大きいステージに立つのもすごい嬉しいです。
―この間のワンマンはどうでした?
めっちゃ最高でしたね。今年入って初のライブで、自分目当てにこの人数集まるのかっていう感動とともに、周りに助けてくれる人が多いことに気付かされて感謝でした。
―ファンからのエネルギーも感じられました?
ですね。これついてくるんだ、みたいなのもあって。結構ギャルが最前列で畳みかけたりしてくるんですよ(笑)。そういうのを見るとおおーって思うし、嬉しいです。
―では、挫折を感じたこととか、すごく悔しい思いをしたことはありますか?
一番大きいのはサッカーをやってた時じゃないですかね。将来の夢はサッカー選手って思ってて、上には上がいるって心の中ではわかりつつ、中学が終わって高校を選択するタイムリミットが来た時に、「俺、夢そんなに決まってなかったんだな」みたいなのがあって。まあ挫折ってよりは、自分で放置してただけなんすけど。高校はあんま楽しくなかったんで、結構息苦しかったっすね。俺は基本常に不機嫌というか、そっち方向で歌詞を書いたり、負のエネルギーでいることが多いんですよ。
―今は(負のエネルギーは)少し落ち着きましたか?
いや、落ち着いてないです。この前のアルバムを出してから時間が経って、すぐに新しいやつ作りたいし。音楽にしろ映像にしろ、出すまでに色々準備があって、みんなの耳に届くまでに時間がかかるじゃないですか。みんなの元に届いた頃には、今作ってるやつの方がヤバいって感じで、ずっとそういう状態ですね。
―曲は常に作り続けてる感じですか?
ちょくちょく作ってます。遊びで作ることもあるし、ちゃんと考えて作るのもある。ちょうどこないだ北海道行って、ノリで書いたやつは最近シングルで出しました。
―では、Bonberoさんがラップを始めた頃と今を比べて、ヒップホップシーンは変わったと思いますか?
変わったと思います。俺が16でラップを始めた時って、高校生ラップ選手権が多分流行りを作ってて、シーンが変わり始めぐらいの頃なんじゃないかなと思ってるんすけど、その時と比べると今は(音楽を聞く側の)消費が早い印象があります。音楽の聞き方が変わって、その聞き方にフィットするような曲の作り方になったかなと思います。
―結構いろんな音楽を聞くんですか?
主にヒップホップが多いですけどね。日本、アメリカ、イギリス、大体その3カ国が多いっす。一番よく聴くのはDreamville(ドリームヴィル)。彼らはずっとかっこいいっす。
―日本と海外のヒップホップシーンやカルチャー、それぞれについて思うことはありますか?
自分はまだ向こうに足を運んでないから憶測で言いたくないですけど、近づいてる印象がありますね。俺が昔日本のラップを聞いてた頃は“日本語ラップ”っていうジャンルがあった感じだけど、それが徐々にグローバル化して向こうに近づいてる印象はしてます。
―海外に行きたい気持ちもあるんですか?
あります。海外は早いうちに行っておいた方がいいって、信頼する人がみんな言うんで。今年くらいから行き始めたいですね。ニューヨークとかカリフォルニア、イギリス、ヨーロッパとか、いろいろ行ってみたいです。
―では、アーティストとして活動していく中で、大切にしてることはありますか?
自分であればいいかなと思うし、自分をどうかっこよく表現するかってとこですかね。明確にこれをしたいっていう野望みたいなものはなくて。今までも目先の仕事を全力でやっていったら変わっていったんで、この先もそんな感じかなと思ってます。
―ご自身の音楽スタイルを一言で表すとしたら?
「飛ぶ」かな。ノレる曲が好きだし、自分のスタイルとも合ってるかなと思うんで。でも明日は変わってるかもしれないんで、断定はできないです。
―ラップとサッカーに共通点を感じたり、サッカーをやってたことがラップに活きてると感じることはありますか?
俺がサッカーから学んだのは、「現実を知る」ってことですかね。サッカーって、上手い下手がもろ出るじゃないすか。練習しても上手くならないやつがいる中、才能あるやつはちょっと練習しただけで上手いみたいな、そういう世界を早いうちに経験しといて良かったなと思います。どの業界も同じだと思いますけど、そういうことを経験しないでその世界に入って、理想と現実の落差にやられちゃう人が結構多いイメージあるんで。
―では、ご自身のMVで一番好きな作品は?
「Flafla」か、「For A Reason」のMVがお気に入りっすね。理由は新しい、最新の方が好きなんで。
―Bonberoさんは周りからはどんなふうに思われてると思いますか?
考える人って思われてんじゃないかなと思います。
―考えるのが好きなんですね。
好きっすね、きっと。
―では、これだけは他人に負けないと思う点は?
「跳ね力」です。
―曲作りで大切にしてること、逆にやらないようにしてることはありますか?
大切にしてるのは、その時の雰囲気を大事にすること。例えばノリで1時間半とかで1曲作ったとするじゃないですか。後日聞くとちょっと粗があって、それを修正するのもいいんすけど、これも味だよなって思って最近はそのまま置いとくことが多いです。やらないことは、曲作ってる時に腹いっぱい飯を食うこと。お腹いっぱいになると、もういいじゃんってなるから、終わるまでは食べないようにしてます。
―自分のやりたいこととか、夢を実現するのに悩んでる人にアドバイスするとしたら?
絶対やった方がいい。やって失敗したとしても、やらないよりやった方が絶対楽しいと思う。「ONE PIECE」みたいな、と言っても結末は知らないんすけど、それまでの旅が楽しかったよね、みたいな感じだと思ってるすね。
―今後フィーチャリングしてみたい人や、一緒に曲を作ってみたいプロデューサーは?
めちゃめちゃいいます。ビートメーカーだと、Kenny Beats(ケニー・ビーツ)とか、J.I.DのプロデューサーのChristo(クリスト)とかもやってみたい。ラッパーだとやっぱDreamville周辺とはいずれやってみたいなって思う。あとはイギリスだったらBXKS(バックス)、国内だとMFSさんとかLEXくんとかですね。
―最近ハマってることはありますか?
eFootballっていうサッカーのゲームをずっとやってます。あと、ラジオを聞いてますね。何か情報を接種してるふうが好きで。音楽は真剣に聞いちゃうんで、脳を休める時間って感じで、ラジオで誰かが喋ってるのを聞きながらゲームしたりしてます。
―これから実現したいと思っている夢や目標を教えてください。
直近だと、EPか何かの作品を出すことと、海外に行きたいですね。そこで得た刺激で、その先の考えを決めてこうかなと思ってます。
―最後に、Bonberoさんにとってヒップホップとは?
向こうの黒人さんたちのカルチャーであり、何か人生を抜け出すためのものなのかなと思っていて、そのカルチャーにアジア人のゲストとして参加してる感覚です。これからもそのスタンスでずっといるっすね。