9sari Cafe & Bar
開店: 2014年12月
業種: カフェ・バー
地区: 東京都新宿区
オーナーのモットー: プレイヤーの交流の場と、ヒップホップの認知度の拡大
Text: Atsuko Tanaka / Photo: Shusei Sato & Atsuko Tanaka
日本のヒップホップシーンを代表するラッパーの一人、漢 a.k.a. GAMIが2014年にオープンした「9sari Cafe & Bar」。西早稲田駅からすぐの所にあり、周りは緑が多く、のんびりとした雰囲気に包まれている。ランチタイムの忙しい時間帯から途切れることなく次々と客が訪れる。嬉しそうに写真撮影を求める客に、漢は丁寧に対応する。料理を提供するだけでなく、人との交流を大切にする場所だ。
また、カフェの奥にはレコーディングスタジオも兼ねていて、日本はもちろん、海外からも有名なラッパーがたくさん訪れ、様々な楽曲制作が行われてきた。漢、そして漢が設立したヒップホップレーベル「9SARI GROUP」の現代表取締役の小林に話を聞いた。
―このカフェをオープンしたきっかけについて教えてください。
最初はスタジオとオフィススペースとして始めたんですけど、スタジオを利用する人のために軽い飲食を作れる場所が欲しいねってなって、カフェを作りました。
―カフェのコンセプトは?
みんなのたまり場ですね。昔は渋谷辺りに、レコード屋とか服屋とか、ヒップホップを好きな連中が集まれる場所が色々あったんですけど、そういうのがだんだんなくなっちゃって、自分がライブでいろんな地方を回った時に、みんながそういう場所を大事にしてるのを見て、やっぱいいなって思ったんです。ここをオープンして8年経って、最近は特にいろんな人が使ってくれるようになったので、前より人との交流が増えました。
―おすすめのメニューはなんですか?
ハンバーグですね。毎日仕込んで作ってます。ハラミステーキも人気。
小林:ハンバーグは「漢さんのハンバーグ」って名前がついてるから、ファンが頼んでくれる。まあ何より美味いんで。
―メニューはいつもどうやって決めるんですか?
大体は俺がいいと思ったもののレシピを考えます。新しいメニューは3ヶ月に一回くらい、いいと思うものがあれば足す感じで、基本はあんまり変わってないです。
―Tシャツやサンダルなど色々なグッズも売られてますね。最近の人気は?
今はCBDビールですかね。これを作ったきっかけは、ミスター(小林)が興味を持って、CBD関連の企画を色々考えてくれて。
小林:だいぶ前からやりたいと思っていて、着手したのは今年に入ってから。今クラフトビールを作れる工場っていっぱいあるんですよ。青森で作ってて、俺たちはそんなに数は作れないけど、今回は5、600本作って。9sariグループが作ってるから、アルコール度数は9%にしました。でもフルーティーで美味しく飲めます。他は、知り合いの焙煎士に頼んで作ってもらったコーヒー豆もあるし、Tシャツとかサンダルも普段も着れるようなものを考えてデザインして売ってます。フードで言うと、一番惹きがあるのは「漢さんの裏メニュー」かな。漢が半日くらい居れる時は、その日にしか食えない、例えば納豆炒飯だったりがその日のおすすめになる率が高い。
―あと、このカフェの大きな特徴と言えば、2匹の看板猫(9ちゃん、11(エルフ))ですね。もともとは漢さんが飼ってた猫なんですか?
9ちゃんはここを作っている時に、裏に居た野良猫で、まだ生まれたばかりなのに家族と離れちゃって一日中泣いてたから引き取ったんです。その次に10ちゃんという子もいたんですけど、病気がちで亡くなっちゃって、その後に地元の後輩づてに引き取ったのがエルフですね。
―今までに店で起きた出来事で、一番印象的な出来事はなんでしょう?
アメリカとか海外のラッパーが、急に「今日本にいるんだけどスタジオを使わせてくれ」とかって来てくれたりします。一番最初にここでレコーディングしたアーティストはJungle Brothersなんです。このスタジオが出来たばっかりの頃、俺たちもこれからって時に彼らが来て。他もいろんな有名な人が使ってくれているんで、こういう場所をやっていて良かったなって思います。
小林:知り合いから聞いて、日本にいる間に思いついた曲を録りたいから貸してくれないかっていうのが多いね。他にEL DA SENSEIやD Smoke、The Diplomatsのメンバーとか、いっぱい来てます。
―スタジオのこだわりポイントは何かありますか?
スタジオの設計は、LAKOBAさんっていう、80年代からLAでライブのPAとかレコーディングのエンジニアをやりながら、スタジオを経営している人にお願いしました。親父の知人の紹介で知り合ったんですけど、感覚もすごい若いし、音楽にめちゃくちゃ優れてる。あとは同世代でアイデアっていう、昔からずっと一緒にやってるエンジニアがいて、機材のことは彼に色々聞いて組み立てていった感じですね。
―漢さん自身もこちらでいろんな曲の制作をされてきたと思いますが、中でも印象に残るものはありますか?
色々ありますけど、強いて言うなら「9sari」っていうEPですかね。このスタジオで一番最初に作った自分の作品なんで。
―では、この店付近のエリアについて教えてください。
新宿って言うと歌舞伎町をイメージしがちかもしれないですけど、歌舞伎町は500平方メートルくらいの小さいエリアなんで、基本的には住宅街の方が多くて、この辺は早稲田大学で有名なエリアです。少し歩けば新大久保とか歌舞伎町も近いんで、僕ら的には便利な場所。もとは学生の街だったけど、今は新大久保が韓国ブームで賑わってるし、高田馬場とかもいろんな人種の人がいて活気がありますね。
―今度初めてこのカフェを訪ねてみようと思っているお客さんにメッセージをお願いします。
ヒップホップに興味がある人はもちろん、そうでない人も立ち寄ってもらって、空気感を味わって欲しいです。あと、しょっちゅういろんなアーティストが来るんで、サプライズで誰かに会えるかもしれないし、是非気軽に来てもらえたらなと思います。
9sari Cafe & Bar
Address: 東京都新宿区大久保3-13-1
Phone: 03-6233-9215
営業時間: 12:00-22:00(L.O.21:00)(定休日:水曜日)
Twitter: twitter.com/9saricafeandbar
Instagram: @kan_9sari/