212.(ツーワンツー)
開店: 2016年6月19日
業種: ギャラリー
地区: 大阪 南堀江
オーナーのモットー: Journey To The Ultimate
Text & Photo: Atsuko Tanaka
大阪南堀江の住宅街に佇むギャラリー「212.」。ストリートまで聴こえてくる70年代ジャズに誘われるがまま店内に足を踏み入れると、そこには感動的な空間が広がっている。もともとは米屋だった場所を、オーナーの下山が自身で改装した。彼の感性が店の隅々まで行き届いているのを感じ取ることができる。
ストリートカルチャーに影響を受けて育った下山は、高校卒業後はスタイリストになるべく服飾の学校に進学する。しかし、2001年にニューヨークを初めて訪れた際に、誰かに着飾ってもらうのではなく、ライフスタイルそのものをファッションとして表現している人々を見て衝撃を受け、そのような人たちを撮りたいと思い写真の道に転換。それから度々ニューヨークを訪れ、撮影した写真と自分の言葉で綴った文章をマガジン「212MAG」にまとめ、不定期で発行してきた。そんな彼はある決意を胸に、約6年前にこのギャラリーをオープンする。
―ギャラリーをオープンしたきっかけについて教えてください。
長年ストリートフォトグラファーとして活動してきて、以前はビルの一室に事務所を構えていましたが、自分の作品により説得力を持たせる為に、ストリートに面した路面を活動の拠点に選ぼうと思い、このギャラリーをオープンしました。
―店のコンセプトは?
Wearing Of Art。ニューヨークではストリートアートを扱うギャラリーはある意味当たり前に存在すると思いますが、日本、特に大阪ではその土壌がまだ発展途上なので、まずは自分がそれを伝えなければという想いで取り組んでいます。
―オープンして6年経った今、人々のアートに対する意識は変わってきたと感じますか?
確実に変わりました。実際に作品の購入につながったりしているんで、特に若い方たちの価値観は変わってきてるなと感じてます。
―ギャラリーを続けていく上で大変なことは?
常に大変ですけど、それは当たり前だと思ってます。まずは伝えていくことが大事だと思うし、今やるかやらないかで、この先が必ず変わってくると思うんで。僕がもっとピースフルにできたらもっと広がりやすいのかもと思うことはありますが、ヒップホップの反骨精神のマインドは絶対に忘れたくないと思ってます。
―こちらで販売している写真は全て下山さんが撮影したものですよね。作品にはどんな想いが込められていますか?
写真には様々なスタイルがありますが、その中でもストリートフォトグラフィーはジャーナリズムにも通ずるリアルな表現ができるジャンルだと思っています。絵画は各々の想像上の世界を描けますが、写真はあくまでも実際に存在する世界しか写し撮ることができません。でも、その中に夢や希望、そして一瞬のきらめきがあり、自分はそこに力強さを感じています。ここにある写真は、ただ単にリアルなだけでなく、夢の世界でもない、真実とファンタジーが同居する自慢の作品たちです。
―なかでも一番のお気に入りの作品は?
選ぶのは難しいけど、今やったら広島の原爆ドームの写真ですね。2008年にフィルムで撮影したものです。原爆ドームの意味って人によって変わってくると思いますけど、僕はある意味日本の象徴だと思っていて。平和への想いはより強くなっていますし、永久に意味を持つマスターピースだと思ってます。
―これまでニューヨークのストリートをたくさん撮られてきましたが、下山さんにとってニューヨークはどんな街ですか?
ニューヨークは、愛を受けた街でも、厳しさを知った街でもあり、おとんとおかんが合わさったみたいな感じですね。でも、どっちも大事で、両方があったからずっと見てこれたと思ってます。
―今までに店で起きた出来事で、一番面白かった出来事は?
常に何かが起こっていて、毎日が奇跡の連続だと思ってるんで一つには絞れないです。なんでもそうですけど、絶対的なものはないから、何か一つを選んだら、ある意味差別になるし、あれがあったからこれがあるみたいな、全ては繋がってると思います。
―店付近のエリアはどんなところですか?
ギャラリーがある南堀江は、もともとは道頓堀沿いだったのもあって、川の水利を活かして材木屋などが集まり、その後は家具の街として栄えました。約30年前まではそのような感じで、その後は服屋やカフェなどができ始めて、一般的にオシャレな街として認識されています。また、最近では至る所でタワーマンションの建設が進み、住人も移り変わってきています。ニューヨークを知らない人には分かりづらいかも知れませんが、個人的にはロウワーイーストサイドのような経緯を辿っていると感じます。
―今度、初めて店を訪ねてみようと思っているお客さんにメッセージをお願いします。
前提として写真は見る人の知性や感性がある程度必要となるので、誰でもハマるわけではないと思いますが、一度見方を理解すると奥深くて楽しい世界です。世にある写真が決して全てそうとは言わないですが、少なくとも自分の作品を手にしてくれた方の人生はきっと豊かになると信じています。
212.
Address: 大阪府大阪市西区南堀江3丁目9-2
Phone: 06-6536-3466
営業時間: 13:00-18:00(定休日:水曜日、第2、第4日曜日)
Website: http://212.lighting/
Instagram: @tets8_photographer