Fedup
開店: 2004年7月
業種: ヒップホップアンテナショップ
地区: 大阪南堀江
オーナーのモットー: いくつになってもコアなHipHopヘッズ目線
Text & Photo: Atsuko Tanaka
大阪の老舗ヒップホップショップ、「Fedup(フェドアップ)」。店内はヒップホップ好きにはたまらないアイテムで埋め尽くされ、オーナーのMoneyJah(モニージャー )が長い年月をかけて集めてきたラップTは、レアなものやデッドストックものなど種類豊富で、まるでレコードを掘るような感覚でお目当て探しを楽しむことができる。
MoneyJahがヒップホップと出会ったのは中学の頃、初めて聴いたのは友達の兄が貸してくれたスチャダラパーだった。その後はアメリカ、主に西海岸のギャングスタラップを聴くようになる。そしてスケボーを通してヒップホップを学び、その時に知り合った仲間とクルー「ゲリラ」を組んで、ラッパーとして活動を始めた。そうして色々とストラグルを重ね、ヒップホップでメイクマネーすべく2004年にFedupをオープン。店のコンセプトや人気アイテムについて、店を続ける上で大変だったことや印象に残る出来事などを聞いた。
―この店をオープンしたきっかけについて教えてください。
元々ラップTが好きで、服屋やレコ屋で見かけたら買っていたんですが、自分がやったらもっと面白い商品を集められるんじゃないかと思ったのがきっかけです。グラフィティショップ「Calmaart(カルマート)」のWa2の後押しもあって、現「DUMBO INCENSE(ダンボインセンス)」の大石くんと始めました。
―店のコンセプトは?
もう20年近くやってるので、時代に合わせて店の形態も徐々に変えていますが、一貫して変わってないのはラップTシャツは全てオフィシャルライセンスのものしか扱わないということ。ブートやコピー商品は取り扱ってません。これはアーティストを微力ながらにサポートしたいというのと、コピー商品を売ることは“ヒップホップを使っていっちょ金儲け”に値するヒップホップへの冒涜だと思っているので、そうならないように気を付けています。あとは、昔のレコ屋みたいに最近起こったヒップホップニュースや新譜情報、OSKストリートニュースを共有、発信できる場ですね。そういった情報は今はSNSですぐに拾えますが、店で人が集うと、別の角度から話が盛り上がったり、人同士の繋がりから新しいアイデアやムーヴメントが生まれたりする。そういうことを何度も経験してきてます。
―店名「Fedup」の由来は?
“Turn the Fed upside down. Fedを逆さにしてDefな商品を取り扱う店”という意味。というのは後付けです(笑)。実際は店を始めるに当たって、店名だけでなくロゴもかなり重要だと思っていて、アメリカに買い付けに行った時にFedExのトラックのロゴを見て、これをサンプリングしたら面白いと思ってロゴ先行でFedupと決めました。ちなみにオープン当初からずっと作っている MixCD 「Fedup Sampler」に必ず入ってるジングルの「I’m fed up」は、Big-L の「Fed Up With the Bullshit」のフックのサンプリングです。
―なるほど。ところで、このジュークボックス、存在感がありますね。
沖縄に旅行で行った時に、ある雑貨店で同じジュークボックスが売られてて、一目惚れして買いたかったんですけど、かなりの送料がかかってしまうため一旦断念しました。そうしたらその5年後くらいにたまたまネットで見つけて即購入。駆動も音もかなり怪しく、1ヶ月ぐらいかけて海外のSEEBURGのフォーラムとか、いろんな動画や写真などを見て、パーツを輸入したりして整備して。1年半ぐらいは完璧に動いてたんですが、その後動かなくなってしまって、今はターンテーブル直繋ぎでレコードを聴く用のスピーカーとして使ってます。1972年製のスピーカーとアンプ内蔵なんですが、音が抜群に暖かくてファットです。今でもめちゃめちゃ気に入ってます。
―では、人気もしくはおすすめの商品を教えてください。
まずラップTシャツは種類豊富なんで、レコードディグの感覚で探しに来て欲しいです。例えばレアもので言うと、Duck Down(ダックダウン)の故Sean Price(ショーン・プライス)の “Shut The Fuck Up! ”Tシャツや、Nas(ナズ)の “Life's a Bitch” Tシャツ、De La Soul( デ・ラ・ソウル)の "Story Book"や"Target Faces" Tシャツとかデッドストックものもたくさんあります。それと、先ほど言ったMixCDシリーズもおすすめ。FedupにゆかりのあるDJがその時代のアンダーグランドヒップホップサウンドを中心に構成したMixCDで、番外編も合わせたら既に30枚近く出してます。作品ごとに色んなMCのシャウトも入ってるので、そこも注目して聴いて欲しいですね。また、ここ数年力を入れてるオリジナルのアクティブウェアは着心地を重視し、ラップTによく似合うシンプルなデザインで展開してます。ビート同様、ヒップホップ好きを唸らすようなサンプリングデザインを心掛けています。
―エアフレッシュナーもかわいいですね。こちらもオリジナルですか?
そうです。今は結構なクオリティの曲がiPhoneのアプリとかでも作れる時代ですが、自分はハード機材が好きで今も使ってるのもあり、そんなヴィンテージ機材をデザインした何かを作りたいと考えていて、型抜きしてカーフレッシュナーにしたら面白いと思って作りました。今あるのはS950、MPC3000、MPC2000XL、SP1200、SP404SX、TR808、Lexicon です。どれも名機と言われる機材のモチーフなので、好きな人は全種類購入してくれたりしますが、一般受けするものではないのでぶっちゃけそんなに売れないです(笑)。ちなみに香りはココナッツやフォーレスト、ブラックアイスなどがあります。
―では、今までに店で起きた出来事で、印象的な出来事を教えてください。20年店を続けるって決して簡単なことではないと思いますが、大変だったり辛かった時期はありましたか?それはどのように乗り越えましたか?
コロナ禍や最近の円安もまあまあ辛かったですし、他にも半ば強制的に店を追い出されたり失踪騒動など、なんやかんやピンチが定期的に訪れましたがなんとなくやれています。店の規模が大きくないので、その都度柔軟に方向転換してるからかなと思います。あとは一喜一憂しないこと。これが割と重要かなと思ってます。
―良い思い出として残っているものは?
初期の頃、店の向かいにCalmaartが同時期にオープンして、店長の Cook(クック)くんと連日共にしていた時は最高にクレイジーで楽しかったし、初代店長ラッパーYが色んなラッパーを連れてきてくれて、その頃に知り合ったMonju(モンジュ)のメンバーは今も大阪に来る時に避難場所として来てくれたり(笑)、自分がやってるスタジオ「Dojo(ドージョー)」で制作することもあります。Dojoで言えば、USのアーティストも色々来てくれてて、Artifacts(アーティファクツ)のEl Da Sensei(エル・ダ・センセイ)が来てくれたり、Beat Junkies (ビート・ジャンキーズ)のJ.Rocc(Jロック)とRhettmatic(レットマティック)、DJ Babu(DJバブー)ご一行が来た時はただただ焦ってたっす 。基本、自分はただのヘッズなんで(笑)。
あとは、これも店にたまたま来たサウンドマンのYoYo(ヨーヨー)が稼働していないサウンドシステムを持ってると聞き、倉庫に見に行ったらクソでかいサウンドシステムが鎮座してて(笑)、これはやるしかないってことで、皆に協力してもらい何度か野外パーティーを開きました。その頃にちょうどFedup創立10周年で周年パーティーもやって、昼間だったのもあって自分と奥さんの両親を招いて来てもらったのもすごい良い思い出として残ってます。でも、何よりFedupの初代店長のYと、2代目Chakra Menthol(チャクラ・メンソール)もラップでカマしまくってFedupのファン層を増やしてくれて、現店長のJASS(ジャス)やZest(ゼスト)のイッキに繋がってるので、自分は人に恵まれているなとつくづく思います。
―先ほどおっしゃっていたスタジオDojoでは、MoneyJahさんはいろんなアーティストのプロデュースもされていらっしゃるんですよね。
そうですね。自分が所属するヒップホップクルー「Yellow Dragon Band(イエロー・ドラゴン・バンド)」のビートを作ったり、JASSのセカンドアルバム「獅子奮迅」のプロデュースをしたり、KOJOE(コージョー)のEP「23」のタイトル曲や、MFSへの楽曲提供などもしてます。また、プロデュース以外に、レコーディングエンジニアとしても多くの作品に関わり、最近では若手育成に力を入れてます。
―素晴らしいです。では、店付近のエリアについて教えてください。
堀江は服屋を始め色んなショップが乱立してますが、四つ橋筋一つ挟んだアメ村と違って生活してる人も多い街です。夜は以外と静かに過ごせるし、歩いてクラブに行けるし、ライブの合間にスタジオでチルッたり出来てめっちゃ便利です。
―最後に、今度初めて店を訪ねてみようと思っているお客さんにメッセージをお願いします。
ヒップホップ初心者からマニアまで、ヒップホップファンなら絶対に楽しめる店なんで気軽に来て欲しいです。
Fedup
Address: 大阪市西区南堀江1-21-9 アクセスサカイ203
Phone: 042-426-8385
営業時間: 13:00-20:00 (定休日:不定期)
Website: http://fedup.jp
Instagram: :@fedup.gear