JUICE BAR ROCKET
開店: 2018年
業種: スムージー&ジュースバー
地区: 東京北千住
オーナーのモットー: 健康、平和、パーティー
Text & Photo: Atsuko Tanaka
北千住の大通りにJUICE BAR ROCKETはある。ランチどきに尋ねると、お母さんと赤ちゃんたちのグループで大賑わいだった。オーナーはラッパーのVIKN。中学生の頃に兄の影響で裏原ファッション、カルチャーに目覚め、そこから彼のハスラー人生が始まった。
ヒップホップとの出会いは高校生の時、さんピンCampをきっかけにラッパーやDJのかっこよさに衝撃を受け、ターンテーブルを買い、レコードを集めるようになった。その後もファッションへの熱は冷めることなく、いつか服屋になりたいという夢を持ち、当時ストリートファッションで最も人気の高かった「GROWAROUND(グロウアラウンド)」で働き始める。数年後独立したのち、全国の知り合いの店を相手にニューヨークでの買い付け業を始め、8年ほど務めた。その後はレコーディングスタジオを開設したり、楽天のインターネットラジオの運営をするなど、多岐にわたる活動を続けながら様々な経験を積んでいく。そんな彼がなぜジュースバーをやることになったのか。
―この店をオープンしたきっかけについて教えてください。
インターネットラジオを運営していた頃、ラジオのチームから「居抜き物件があるけど、何かやらない?」と声をかけられたんです。紹介された物件は、当時住んでいた学芸大学にある元バーでした。その場所を活用すればラジオの公開収録もできるし、何か新しいことをやるのにいいかなと思って。バーやカフェでは普通すぎると感じ、ニューヨークでの買い付け時代に印象に残っていたジュースバーを思い出して、これぞ挑戦すべきだ!と思いました。
―確かにジュースバーってアイデアがユニークですし、しかもラッパーの方がやるというのが面白いですよね。
昔から、人がどんなことを求めてるのかとか、何が面白いとされているのかを考えたり、ニッチなことをやるのが好きだったんです。あと、ちょうどその頃、The LOXのJadakissとStyles Pが「Juice for Life」っていうジュース屋をニューヨークのヨンカーズとブルックリンで始めたんですよ。「健康はギャングスターだ」っていきなり健康志向になって(笑)。俺もニューヨークに買い付けに行ってた頃、疲れた時にジュースを飲んだらめっちゃ元気になった経験があったし、現地でジュースバーがみんなの生活に根付いてるのを見ていいなと思って。
―それからはどんな動きを?
ニューヨークに行って、ハーレムでジュースバーをやってる人を紹介してもらって、レシピや使ってる機材を教えてもらい、それらを全部日本に持ち帰りました。飲食経験はゼロでしたけど、店は学大エリアの碑文谷の近くで、マダムもいっぱいいるしバッチリでしょ、なんてすごく安易な考えで始めたら、ジュースは全然売れないし、お客さんも全く来ないしで、最初の2、3年はめっちゃ大変で。そろそろやばい、店の家賃が払えなくなるってなった頃、ある先輩にアドバイスをいただきました。その先輩も、以前バーを出したけど1年持たずに潰しちゃった経験があったんです。
―どんなアドバイスだったんですか?
自分の音楽を絡ませずに、かっこつけてジュースだけ売っていてもダメだと、使えるもん全部使わないとマジやってけないよって言われて、すげえ刺さりました。お前はイベントできるんだろ、だったらイベントやって酒を売る、そこでジュースも一緒に売るんだよって。それでやり方をちょっとずつ変えていったんです。もちろんあくまでもメインはジュースですけど、ジュースだけじゃなくご飯やお酒を出したりして、週末はとにかくイベントを組んで人を集めて、っていうのをやっていったら少しずつ良くなっていきました。その2年後に店を今の場所に移したんですけど、あの頃の経験があったから、ここでスタートした時は何となく見えてた感じでした。
―では、改めて店のコンセプトを教えてください。
「健康、平和、パーティー」みたいな感じです。健康的なメンタルで、昼間はお母さんたちに安心して使ってもらって、週末はパーティーをやって。パーティーは音楽イベントが中心で、他は服の展示会とか、アートや写真の展示、ワークショップもやったりしてます。別に音楽やヒップホップに限らずなんですけど、僕がヒップホップのコミュニティとたくさん関わりがあるんで、やっぱりそういう系のパーティーが多いですね。その時は昼間とは真逆の客層で、ディープな雰囲気になります(笑)。
―ちなみに、ここではオリジナルTシャツを作るサービスも提供してるそうですね。
はい、デジタルプリントで1枚から作れます。パーティーをやる際、自分のグッズがない人が結構多くて、うちに機械があればみんなノーリスクでギャラプラス売り上げを作れるからいいなと思って始めたんです。自分はずっと服に携わってきて、前は売る側でしたけど、今は作る側になった感じですね。こういう場所を持って、飲食を提供できて、パーティーも開催できて、服の生産もできる。それと、レコーディングスタジオもありますし、ビデオ撮影や編集もできるプロダクションが揃ってるんで、みんなの手助けができたらいいなと思ってます。
―いいですね!では、店の人気メニューを教えてください。
ジュースは「GREEN WAVE(りんご、キウイ、パイナップル、スピルリナ)」。緑色で飲みにくそう、苦くて美味しくなさそうって思ったらめっちゃ飲みやすいっていう。そういうギャップを大事にしたいと思ってます。あとは「ジュース屋さんのカレー(コールドプレスジュースを絞る際に出る野菜や果物のパルプを活用)」。20種類以上の野菜と果物の繊維がたっぷり入っていて、スパイスのみで仕上げているのでグルテンフリーです。素材の持つ自然な風味と栄養を活かしたヘルシーな一品です。
―ジュースクレンズもありますね。知らない方もいるかと思うので、ジュースクレンズの効能についてなど改めて教えていただけますか?
人間の体は酵素を燃料としています。その燃料を何に一番最初に使うかというと、食べたものの消化なんです。たくさん食べるとそこで燃料を全部使ってしまい、例えばアンチエイジングとか、細胞を増やすとか、次のフェーズに使える燃料がなくなってしまう。そこで食事を摂る代わりにコールドプレスジュースを飲めば、燃料を消化に使わずに、その次のフェーズに使うことができる。健康的になるのはもちろんですけど、マインドがめっちゃ良くなります。
―どんなふうに?
日本人って「3食食べなきゃいけない」っていう教育が多分植え付けられていて、お腹が空いてなくても「何か食べなきゃ」とかってなってる人が多いと思うんです。でも、ジュースクレンズすると、頭の意識を「食べなきゃいけない」ってところから離してくれる。それがすごく気持ちいいというか、感覚的にすごくフレッシュになるし、ぜひ味わってみてもらえたらいいなと思いますね。俺は、ちょっと体が重いとか、体に蕁麻疹ができたとか、調子が悪くなったらやります。1日やるだけでも十分です。
―1日の場合は、どれぐらいの量のジュースを飲むんですか?
うちが提案しているのは300mLぐらいのコールドプレスジュースを7種類、お腹が減ったら飲んでもらう感じです。でも1日で飲まないといけないとかはないんで、1日で飲みきれない人は1日半かけてやったりとか、人それぞれですね。
―ところで、看板犬のじゅーす君、とても可愛いですね。犬がOKなお店ということで、犬同士のいろんな出会いやコミュニケーションもあるかと思いますが、印象的なものはありますか?
「今日はじゅーす君いますか?」って電話がたまにかかってきます(笑)。いつも店にいるわけじゃないんで、いるなら連れて行きたいですって。
―では、今までに店で起きた出来事で、一番印象的な出来事を教えてください。
2020年の年末に行われたSCARS(スカーズ)のイベントは特別な一日でした。当日は多くのなじみの顔が集まり、温かい雰囲気の中で素晴らしい時間が共有されました。ですが、そのイベントのわずか1週間後にスティッキーが亡くなり、結果あの日が彼にとって最後のライブとなってしまったんです。彼の笑顔は今でも鮮明に心に残り、忘れられない思い出となっています。
―素敵な思い出ですね。店付近のエリアはどんなところでしょうか?
北千住は東京、茨城、千葉を結ぶハブとして機能する駅であり町です。そのため、大学が5つもあり、子どもから大人、さらには高齢者まで、幅広い世代の人々で賑わっています。駅近くの「飲み横」は独特の雰囲気があり、インバウンドの影響を受けていないため、商業的ではなく良質な飲み屋が多く並ぶ魅力的なスポットです。一方で、駅周辺から少し離れるとファミリー層が多く住む住宅エリアが広がり、落ち着いた環境が特徴的です。
―最後に、今度初めてROCKETさんを訪ねてみようと思っている方にメッセージをお願いします。
ポジティブなエネルギーとフレッシュなジュースをキャッチしに来てください。