渋2鮨
開店: 2022年10月4日
業種: 鮨屋
地区: 東京渋谷
オーナーのモットー: エンタメ!
Text & Photo: Atsuko Tanaka
オーナーの降矢は滋賀県出身。21歳の時に、地元の先輩の車の中でFunkdoobiestの「Which Doobie U B?」を聴いて、一気にヒップホップにドはまりする。そしてクラブでプレイしているDJや機材のカッコよさに興味を持ち、自身もヒップホップ DJとして仲間と一緒にイベントを開催するようになった。
その後、遊んでばかりではいけないと心を入れ替え、以前から好きだった料理の道へ。物件を抑え大好きなお好み焼き屋を始めるも、メニュー考案に苦戦し、大阪に修行に出ることを決意。多忙な店で早く魚を捌く技術を手に入れたのち、念願の「銀平」で10年ほど勤めた。その後は高級寿司店などいくつかの店で修行を積んで、2017年に上京。恵比寿の鮨屋で働くことが決まっていた矢先に事故に遭う。不運に見舞われたと思ったところに大きな転機が訪れた。
―この店をオープンすることになったきっかけを教えてください。
東京に来て、恵比寿の鮨屋で働く予定だったんですけど、大きなバイク事故をやってしまって。少し待ってもらって松葉杖で復帰したものの、荷物も運べないし使い物にならないということで断られてしまいました。しばらく不安でしたが、その後、三宿の十方鮨の立ち上げに携わることになり、そこによく来ていたお客様と話すうちに、一緒に鮨屋をやろうということになったんです。不幸中の幸いでした。
―そうだったんですね!この店のコンセプトは?
鮨屋は数あれど、大半は「こうでないといけない」という昔からの暗黙のルールが沢山あります。それを否定するつもりはなく、良いことを伝え、受け継がれているとは思っていますが、型を破った鮨屋があってもいいんじゃない?と、もっと気楽に本格的な鮨を楽しんで欲しいという思いから、「ショーパン&ビーサンで来れる“鮨の変態・ザ★江戸前おもろ鮨”」というコンセプトを打ち出しました。
―型破りなスタイルが受け入れられるのは、降矢さんの料理の腕があってこそですよね。ところで、壁に描かれたBiggyやトライブの絵が印象的ですね。
それらの絵は自分で描きました。自分を隠したり抑えたりすることなく、好きなことを存分に出した店にしたくて。ちなみに絵を描くのは子供の頃から好きで、塗り絵もよくやってましたね。大人になってからはイベントのフライヤーとかをデザインしたりしてました。
―では、店自慢のメニューを教えてください。
熟成マグロや、根性焼き(大トロ)、粉雪イカとか、新鮮な魚ですかね。毎朝豊洲で買付けしていますが、自分にとってとても大切な仲買人さんとの会話を元に、市場の状況に応じて魚を選んでます。
―店付近のエリアはどんなところですか?
渋谷駅からも微妙に離れていて、知る人ぞ知る、ちょっと大人なエリアです。青学はあれど、学生が戯れることは少なく、ちょっと個性ある人たちが集まるエリアかな。
―ところで買い付けはハーレーで行くそうですね。昔からそのスタイルですか?
そうですね、ハーレーに乗り始めたのが19で、今のバイクは6年くらいです。以前YouTubeの番組に出させてもらったことがあるんですけど、それを見た岡山の方が「やっと来れました!」って店に来てくれたり、市場でも一緒に写真撮ってくださいって言われたりします。俺、そんなんじゃないんだけどって思いますけど(笑)。
―では、今までに店で起きた出来事で、最も印象に残ることはなんでしょう?
ある時来ていた海外のお客さんがカウンターにあるマイクを見て、「何か歌えるんでしょ、歌って」と無茶振りしてきて、ボブ・マーリーの「One love」を流し始めたら、その場にいたお客さんみんなで大合唱になったこと。あとはオープンの日、仲間たちが集まってくれて、お花を飾る代わりにシャンパンとかを飲んで祝ってもらって、売り上げが500万行ってめちゃびっくりでした。その日はここで徹夜して、次の日の朝、その500万を入れたリュックをしょって市場に買い付けに行きました(笑)。
ーすごいですね!では一番大変だった、辛かった時期を挙げるとしたら?
店を始めた頃、バイトの子達がどんどん辞めていった時です。10人ぐらいいたんですけど、みんな飛んだりとかしていなくなって本当に大変でした。あとは東京に出てきてバイク事故をした時ですね。でもそのおかげでこの店をやることになったんで結果良かったです。
ー今後挑戦してみたいことなどはありますか?
できればここは誰かに引き継いでもらって、新しいことに挑戦してみたいと思ってます。例えば、大好きなバイクとか、自分の周りにあるいろんなカルチャーから生み出されるものをデザインに落とし込んでアパレル関係をやりたいです。あとは滋賀県の信楽にバイクステーションを作りたい。信楽は山に囲まれていて空き地がいっぱいあるんで、地元の人たちの集合場所であったり、県外から来る人たちにとっての休憩地点やゴールになったり、バイク好きの聖地みたいな所ができたらいいなと思ってます。
―楽しみにしています!では最後に、今度初めて渋2鮨さんを訪ねてみようと思っているお客さんにメッセージをお願いします。
普通の鮨屋ではないですが、バイクや音楽など気軽に趣味の話をしながら、旨い料理を食べて、面白かった!楽しかった!と笑って帰って欲しいです!