
Manhattan Records
開店: 1980年
業種: 小売店/配信レーベル
地区: 東京・渋谷
オーナーのモットー: リスペクト
Text & Photo: Atsuko Tanaka
渋谷のメインエリアを少し外れた場所に佇む、青い「m」ロゴが目印のマンハッタンレコード。ヒップホップ好きなら誰もが何かしらの影響を受けてきたであろうこのレコードショップは、今や日本国内のみならず、世界中にその名を轟かせている。海外からも多くのファンが足を運び、唯一無二の音楽体験を求めて訪れる。
創業は1980年。故・平川雅夫氏が、渋谷警察署裏に廃盤専門店としてオープン。その後、1993年に現在の宇田川町に移転し、シーンの最前線を走り続けてきた。今年で45周年を迎え、さらなる飛躍を遂げるべく、韓国へ出店するなど再び注目を集めている。
現在、店を率いるのは「MarT」の名で親しまれる原田。山形県で生まれ育った彼は、中学時代から洋楽に親しむようになり、高校時代にDJをしていた友人の影響を受け、自らもその世界へと足を踏み入れた。そんな彼に、マンハッタンレコードの歴史や人気アイテム、そして今後の展開について話を聞いた。
―45周年おめでとうございます!オープン当初は廃盤専門店としてスタートしたそうですが、簡単なヒストリーを教えていただけますか?
最初は渋谷警察署のすぐ裏手にある、テナントもできるようなマンションの一室で始まったと聞いてます。畳で靴を脱いで、みたいなスタイルだったそう。今の場所に移ったのは93年。その頃レコードシーンがすごく盛り上がっていて、近辺にタワーレコードさんやシスコさんなど多くのレコード屋があり、周りに競合がある方がレコード目当てにたくさんのお客さんが来てくれるだろうと、この物件が見つかったタイミングで移転したようです。
取り扱う音楽のジャンルは、最初の頃はブルースやロック系が多かったみたいですが、お客さんの声を聞いてジャズファンク、それからラップやダンスミュージックなどが増えていきました。新譜を扱うようになったのは、そもそも廃盤はマニア向けでとても高いので、よりたくさんの人に安く、スピード感を持ってレコードを仕入れて回していくことで、シーンに貢献していきたいという思いが大きかったかと思います。
―原田さんがマンハッタンを知ったきっかけは?
僕は高校生の時に友達に影響を受けてDJするようになったんですが、彼らとどこでレコードを買うかという話になり、地元のレコード屋で買ったDJ KOMORIさんのミックステープを通してマンハッタンの存在を知りました。実際に店に来たのは高3の時です。マンハッタン以外にも周りにレコード屋がたくさんあって、もう夢の国みたいな感じで、全財産をレコードに使いました。
―その頃のマンハッタンに対する印象や思い出などはありますか?
マンハッタンの特徴といえば、やはりアイコニックなポップだったと思います。例えば「今のギャル受けNo.1!」とか「これは必ず絶対2枚買い!」みたいな、今ではちょっと考えられないようなものもあって。僕は当時DJの知識がそこまでなかったので、どういう曲を買えばいいかの指標があってわかりやすかったと思います。あとはR&Bのレコードが他のレコード屋に比べて多かったことも、R&B好きな自分にとって相性良かったかなと。




―マンハッタンで働き始めたのはいつ頃だったんですか?
専門学校を卒業してからですね。DJしながらアルバイトをしばらくして、その後2008年からマンハッタンでバイトとして働くことになりました。本当は店舗で働きたかったけど、その時は倉庫で、通販のピックアップやレコードの卸し、あとは入荷物のバーコードを貼る作業などをしてました。それから1年後、色々体制が変わるタイミングで辞めて、違うレコード屋で8年ほど働き、もう一度挑戦してみたい気持ちでまたマンハッタンに戻ってきました。その3年後のコロナ禍に店長になり、約4年が経ちます。
―では、この店のコンセプトを教えてください。
ヒップホップカルチャーの交差点であり、アーティストやお客さん同士のハブとなる場所、カルチャーの発信拠点。
―店の人気アイテムはなんですか?
新品レコードと自社オリジナルグッズをメインに、中古レコードやカセットテープも広く取り扱っていますが、今の一番人気は、“m”ロゴを使用したグッズやアパレルでしょうかね。アパレルについて説明すると、昔は「Manhattan Clothes & Shoes」というセレクトショップが今の店の隣にあって、オリジナルアパレルと他ブランドの服や靴を扱っていたんです。その店が2010年になくなって以降、アパレルはレコードのおまけみたいな感じで続けていたんですけど、時とともにロゴグッズに対する人気というか、お客さんの認知度を感じるようになったんで、コロナ前後ぐらいからしっかり展開していこうとなりました。若い子たちも手に取ってくれるようなアイコニックなアイテムを、うちのスタッフのKaleido(Sound’s Deli)にデザインしてもらっています。今は、リニューアル後の店舗が背面に描かれたTシャツやスウェットが人気です。
―ところで2階はよく見ると面白いアイテムがあちこちにありますが、一番レアなもので言うと何になりますか?
MF Doomの 「Operation: Doomsday」ですかね。最初のリリースが自主盤で、当時の流通量は今と比べたら全然多いとは思うんですけど、それでも多分限られた枚数だったから希少価値がすごく高くなっているし、かつ今も尚人気の盤で保存状態が良く、僕らも大事にしたいと思える1枚なんで、この金額(ぜひ店頭でご覧ください!)で欲しい人がいたら買ってくださいみたいな感じで置いてあります。あとはカセットテープかな。レコードって高いけど、同じようにアナログを感じたいという時に割と手軽に買いやすく、プレーヤーと合わせても1万円いかずに揃えられるので。
―では、今までに店で起きた出来事で、一番印象的な出来事を教えてください。
渋谷がレコードの街としてギネスブックに認定された当時、たしかMISIAさんのレコードリリース日だったか、NHKの交差点の先まで開店待ちの列ができたという逸話を聞いています。あとは海外のアーティストがたくさん立ち寄ってくれたことですかね。近年もアルケミスト(The Alchemist)やクッキン・ソウル(Cookin’ Soul)が meet & greet をしてくれたり、ノレッジ(Knxwledge)もよく訪れてくれます。
特にアルケミストと初めて会った時のことは印象に残ってます。落ち着いていて紳士で、話すことにもすごい説得力があって、オーラを感じました。1回目のファンミーティングは事前アナウンスもなくゲリラ的に行ったんですけど、コロナ後でみんな人と会う機会を求めていたこともあり300人以上殺到しました。それで僕らが時間を気にしていると、「急がないでいい、焦るな」と言って、来場者全員に対して真摯に対応してくれました。イベントが終わった後、動画であなたのようになりたい人に対して一言メッセージをくださいって言ったら、「インスピレーションを得るには時間が必要だ。まだまだ足りない、1万時間、いや10万時間は作り続けろ。いつかその時が来たら、君は準備ができている」って言ってて、本物ってこういう人なんだなって強く感じましたね。
―素敵な話です!話は変わって、先月韓国のソウルにも店をオープンされました。海外展開とは新たな大きな一歩だと思いますが、経緯や反響などを教えてください。
オープンに至るまで準備とかやり取り、契約などで数年かかりましたが、ようやくオープンすることができました。一緒に新たな歴史を作っていきましょうというところに深く理解を示してくれています。店をオープンする前から既に韓国内で認知されていたのと、レコード人気が相まって、「ついにマンハッタンが来た!」というようなテンションを感じましたね。
―オープニングは盛り上がったんですか?
店舗で行われたオープニングレセプションは関係者のみでしたが、1月のプレオープンの時は、前日にインスタ告知しただけにも関わらず、朝から行列ができて予想以上の人が来てくれました。向こうの運営チームが国内のメディアやエンタメなど、特にアパレル界隈での影響力が強く、そのサポートも大きかったと思います。いろんなメディアが取り上げてくれて、とても盛り上がりました。
―向こうも置いてあるアイテムは日本と似たような感じなんですか?
向こうはどちらかというと、現在はアパレルの方に重視していて、韓国でしか買えないオリジナルアイテムを展開しています。レコード方面は僕らがサポートしているような形です。








―他にも、今後お店として挑戦してみたいことはありますか?
元々グローバルな思考というか、海外とのコミュニケーションみたいなところは、平川さんの創業当時からずっと大事にしてきていることで、今回こうして韓国に拠点ができましたし、世界に向けた視点は変わらず持ち続けていきたいと考えてます。また、デジタルネイティブの世代が増えてきているので、アナログの文化を大事にしていきつつ、これからもマンハッタンがカルチャーのハブであり、入口の存在であり続けたいと思ってます。
―インバウンドのお客さんも、とても多いですもんね。
最近は若いアジア系が増えていますね。 欧米の方は家族で来る方とかが結構います。ちなみにインバウンドに今人気なのは、カタカナのアイテム。この前もカリフォルニアからテンション高めの人が「カタカナのTシャツくれ」って来ました(笑)。
―もう漢字の時代ではないのですね(笑)。では、店付近のエリアについて教えてください。
90〜00年代にセンター街がメインストリートだった時代は、その終着地点のようなイメージだったでしょうか。現在は再開発の影響でMIYASHITA PARK側が渋谷の玄関口になりましたよね。なので、こちらは裏渋谷のようなイメージだねってスタッフとは話してます。
―最後に、今度初めてこの店を訪ねてみようと思っているお客さんにメッセージをお願いします。
長い歴史の中で自然とカルチャーが凝縮された場所です。カルチャーとは?ということに興味を持っている人は一度遊びに来てみてください。カルチャーのシャワーを浴びることができます(笑)。
Manhattan Records
Addres: 東京都渋谷区宇田川町10-1 木船ビル
Phone: 03-3477-7166
営業時間:12:00-20:00
Website: https://manhattanrecords.jp/
Instagram: @manhattan_records